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2018-06-07

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」は「最後のジェダイ」だった!



「ジュラシック・パーク」シリーズには、実は個人的な思い入れがなにもない。オリジナルの「ジュラシック・パーク」を見たときは、たしかにCG映像に驚かされたけれど、もともと「エイリアン」シリーズとかホラー要素のある映画が苦手である。おまけに童心をとうの昔に失ってしまったので、動いている恐竜を見たところで熱いものがこみ上げるわけでもない。

だから、前作「ジュラシック・ワールド」を思いのほか楽しんだとき、自分自身でも驚いてしまったほどだ。


そして、どういうわけか「ジュラシック・ワールド/炎の王国」も楽しんだのだ。

前作にも登場したラプターの「ブルー」が重要な役割を果たす © Universal Pictures

「ジュラシック・ワールド」は「ジュラシック・パーク」の新シリーズ

2015年に公開された「ジュラシック・ワールド」は、通算4作目にあたるものの、新シリーズの第1弾として作られた。前作「ジュラシック・パークIII」(01)の劇場公開から14年も経過していたから、ユニバーサルは旧作のファンだけでなく、新しい観客を開拓する必要があった。

つまり、続編でありながらも、未見の人でも楽しめる作りにしなければいけない。

かくして、〈続編とリブートのハイブリッド型〉が開発された。乱暴な言い方をすれば、新キャラクター/新キャストでお馴染みのストーリー設定をリサイクルするアプローチで、かつての人気シリーズを復活させる際のおきまりのパターンとなっている。世界で大ヒットを記録した「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」も、「ジュマンジ」(95)の続編/リブートである。
さて、「ジュラシック・ワールド」は、恐竜たちを蘇らせる→想定外の事件発生→生き残りをかけたサバイバルゲーム! っていう従来のパターンをきっちり踏襲。それでも新鮮に映った最大の要因は、新たな登場人物たちが魅力的だったからだ。クリス・プラット演じるオーウェンが大活躍するけれど、真の主人公はブライス・ダラス・ハワード演じるクレアのほうだ。恐竜を商品としか思っていなかったビジネスウーマンは、一連のトラブルを経て、大きく成長する(一方、オーウェンはあまり変わらない)。冒頭では白いドレスにハイヒール姿だった彼女の衣装の変化が、内的変化とリンクしていた。ストーリーとしての完成度が高かったと思う。

さて、「ジュラシック・ワールド 炎の王国」は、「ジュラシック・ワールド」のつづき。前作とは異なり、純粋な続編である。だから、この映画を楽しむためには、「ジュラシック・ワールド」は見ておかなきゃいけない

前作の大惨事から3年ーー。
大人気テーマパーク「ジュラシック・ワールド」は放棄され、恐竜たちは大自然で自由に生活をはじめていた。
しかし、島で火山噴火の予兆がとらえられていた。迫り来る危機的状況の中、恐竜たちの生死を自然にゆだねるか、命を賭け救い出すか。
人間を救うためだけでなく、恐竜のための選択を迫られる。

火山噴火により恐竜が絶滅の危機に © Universal Pictures


あらすじを読むと、主人公たちが例の島に戻り、いつものパターンが展開するのだな、と想像するだろう。
 
でも、その予想は見事に裏切られる。主人公たちはイスラ・ヌブラル島(コスタリカ沖にあるとされる架空の島)に戻るけれど、間もなく大噴火が発生。その後はアメリカ本土を舞台に物語が展開する。

つまり、王道パターンを捨てて、新たなステージに物語を進めているのだ。


さらに、「絶滅した動物を科学技術で復活させて良いのか?」という従来の命題に、「復活させた動物が絶滅危惧種となったとき、保護すべきか?」というテーマが加わった。恐竜たちは人為的に復活させられた存在だ。しかし、命であることには変わりがなく、絶滅の危機に瀕したいま、他の絶滅危惧種のように対処すべきなのか?このテーマをめぐり、クレアとオーウェンは対立することになる。

今回は密室でのアクションが多い© Universal Pictures


このシリーズの存在意義は、観客に2時間のハラハラドキドキを提供することだ。でも、なんでもありのファンタジーではなく、起こりえる未来を描くことも忘れていない。前作ではDNA操作によって生まれた恐竜が導入されたが、「炎の王国」では、その先の段階が描かれる。ネタバレになるのでこれ以上のコメントを控えるが、個人的にはここが最大のサプライズだった。


「ジュラシック・パーク」シリーズに子供は欠かせない© Universal Pictures


前作「ジュラシック・ワールド」がそれまでの要素をうまく再利用した良質なエンタメ映画だったのに対し、「炎の王国」はお馴染みの領域を離れて、新しい領域に足を踏み入れている。この関係性は最近の「スター・ウォーズ」と近いと思う。「ジュラシック・ワールド」が「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」だとすれば、本作は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」だ。「最後のジェダイ」には新たな要素/展開が導入されたため賛否両論を巻き起こしたけれど、個人的にはその野心性を高く評価している。

「炎の王国」が「ジュラシック・ワールド」に劣っている点がひとつあるとすれば、物語の完成度だ。実は「炎の王国」は、2021年公開予定の「ジュラシック・ワールド3(仮題)」に繋がっている。そう、この映画は3部作の真ん中にあたるのだ。「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」ほどショッキングじゃないにせよ、この映画はクリフハンガーで終わる。エンディングで物語がきれいに収束し、ほっとした気分に浸りたい人には向いていないかもしれない。

でも、次の展開をあれこれ想像して楽しむのが好きなタイプにとっては、最高のエンディングだと思う。

今回のおすすめビデオ

ジュラシック・ワールド



この映画を見るためには、前作「ジュラシック・ワールド」は必見。忙しければ、これ一本だけでも抑えておきましょう。


ジュラシック・パーク



「ジュラシック・ワールド」の次に見ておくべきは、元祖「ジュラシック・パーク」。パークの成りたちはもちろん、ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)、イアン・マルカム博士(ジェフ・ゴールドブラム)といったキャラクターは、「炎の王国」にまで繋がってます。VFXに慣れきったいまの観客が、この映画を観たらどう思うのか、逆に興味があります。



ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク




「ジュラシック・パーク」第2弾。恐竜がアメリカに上陸する点は、「炎の王国」と同じ。



ジュラシック・パークIII



本作でスピルバーグ監督からジョー・ジョンストン監督にバトンタッチ。コンパクトにまとまってます。


ウエストワールド



「ジュラシック・ワールド」をきっかけに「ジュラシック・パーク」を遡るのもいいけれど、マイケル・クライトン原作のテレビドラマ「ウエストワールド」に進むのも面白い展開だと思います。このドラマの魅力については、いずれ詳しく書きます!





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