前作の直後から物語がスタート!©2018 Disney/Pixar |
ブラッド・バード監督と筆者 ©HFPA |
実はスタントン監督、バード監督ともに、最後に作った実写映画が興行で失敗しています。「トゥモローランド」は制作費1億9000万ドルに対し世界興収2億915万ドル、「ジョン・カーター」は制作費2億5000万ドルに対し世界興行2億8413万ドルと、いずれも配給、宣伝を入れたら入れたら大赤字です。実写映画で火だるまになった彼らが得意のアニメ映画、しかも、大ヒット作品の続編で復帰を果たしたのは、決して偶然ではないでしょう。そもそもディズニーが彼らに実写の超大作を撮らせたのはーー「ジョン・カーター」も「トゥモローランド」もディズニー作品ですーー、ピクサー作品の続編を作らせる狙いがあったからではないかと思います。
意地悪な言い方をしましたが、経緯はともあれ、「ファインディング・ドリー」と同様、「インクレディブル・ファミリー」も素晴らしい続編に仕上がっています。
日本版予告編
「インクレディブル・ファミリー」は、前作「Mr.インクレディブル」の直後からはじまります。文字通り、前作のエンディングから数秒しか時間が経過していません。前作の公開から14年もの歳月が経過していることを考慮すると、物語内の時間が止まっていることを奇異に感じる人がいるかもしれません。たとえば、子どもたちを成長させて、長男のダッシュが大学生、長女のヴァイオレットがOLになっているという設定でも良かったはずです。
それでもブラッド・バード監督は、登場人物たちを成長させることを拒みました。バード監督にとって、「インクレディブル」シリーズの魅力は登場人物の年齢と密接に繋がっているからです。
前作「Mr.インクレディブル」の企画開発を行っている際に、バード監督は家族それぞれに独創的な特殊能力を与えようとしたそうです。ですが、リサーチの結果、ありとあらゆる特殊能力がすでに導入済みであることが判明しました。そこでユニークな能力を生み出すことを断念し、それぞれのキャラクターの個性にあった能力を設定することにしました。そこで、お父さんは一家の大黒柱だから怪力、お母さんはマルチタスクが必要だからゴム人間、思春期のお姉さんは透明人間とバリアー、小学生の長男は元気盛りだから超高速、赤ちゃんは可能性のカタマリだから無限の能力、となりました。つまり、それぞれの能力は、各キャラクターの役割や性格を象徴しているのです。
今回はお母さんのヘレンが大活躍 ©2018 Disney/Pixar |
さらに言えば、「Mr.インクレディブル」のテーマは家族で、それをスーパーヒーローものという枠のなかで描いているからこそ、独創的な作品となっていた。もし子どもたちを成長させたら、普通のスーパーヒーロー映画になってしまうんです。だからこそ、本作で主人公たちは年を取っていないのです。
スーパーヒーローとしての華麗な活躍のみならず、家族生活のありきたりな日常を丁寧かつコミカルに描くアプローチは、「インクレディブル・ファミリー」にもしっかり受け継がれています。スーパーヒーロー映画が氾濫しているいまでこそ、この個性がぴかりと光っていますね。
最後に字幕はついてませんが、劇中映像をいくつか。
ちょっとネタバレなので、ご注意ください。
最初のアクションシーン
ボブ、ヘレン、フロゾーンがスーパーヒーローを合法化する計画を持ちかけられる
ヘレンがバイク、イラスティサイクルをもらう
ジャックジャックに手を焼くボブ
疲労困憊のボブが、エドナ・モードに助けを求める
取材時にはエドナ・モードの声も聞かせてくれました! ©HFPA |